| 14)森林に関する政策の考え方
森林に関する政策は、森林の問題だけに限定されてはならない。
第一に、森林と山村の関係の再創造という課題があり、第二に、可能な限り循環的な都市の暮らしをつくり、農山村と都市とは互いに協力し合って成立していることを、すべての人々が実感できるシステムをつくる、という課題がある。
森林の政策は、農山村政策であり都市政策であり、同時に参加型社会をつくっていくカナメとしての総合性をもたなければならない。そのとき国有林は、先頭にたって開かれた国有林を創造すべきであろう。そのためには、まず第一に森林計画、施業計画をつくっていく段階からあらゆる情報を開示し、第二にこの過程への流域のあらゆる人々参加を求め、第三に事業実施後のチェックを流域の人々に求める体制をつくる必要がある。いま必要なことは国有林の分割や経営合理化ではなく、国民とともに国民の求める森づくりをすすめることである。
15)所有権と利用権の関係について
いうまでもなく森林には所有権があるにもかかわらず、森林の果たしている役割の受益者、利用権者は広く人間全体に属している。
したがって、所有権と利用権は分けて考える必要があり、現状では、所有者の権利が強すぎることは明らかである。
この状態を改革するには、(1)流域、あるいは小河川においては、統合流域単位で、流域の森を管理・維持するための「フォレスト・ミニマム」とでもいうべきものを策定し、その基準に合わせて、森林所有者に所有森林の管理計画を提出してもらう。(2)その場合、所有者の管理放棄、管理不可能な森林については、「流域森林委員会」をつくり、そこに利用・管理権を移管させる
(3)その場合、森林管理のための林道、徒歩道などの建設にあたっては、「流域森林委員会」が必要と認めたときは、所有権者の同意がなくても、一定期間の公示とそれに対する異議申立ての制度をつくり、異議申立てのなかったときは、「流域森林委員会」の責任で建設できるように改める
(4)新たに林業、森林管理に加わりたい人々、団体に対して、「流域森林委員会」に管理・利用権を移管した森林を、貸与できるシステムをつくる、などの方策を打ちだす必要がある。
同時に、前記「フォレスト・ミニマム」のなかに、流域の実情に合った保安林的機能の基準をも内包させていく必要がある。
また同時に、「流域森林委員会」は、流域市民や森林ボランティアが積極的に参加できることが必要であり、単なる行政や「林野一家」間の調整団体であってはならないことはいうまでもない。
16)「フォレスト・ミニマム」について
各流域におけるこれからの森林のあり方を考察し、そのうえで必要最低限の森林の整備・管理のあり方を定める。
17)「流域森林委員会」について
関係する自治体・行政、森林組合、農協、漁協、木材関連業者、流域市民代表、森林ボランティア、学識経験者によって構成し、「フォレスト・ミニマム」の策定、森林利用・管理計画図の策定、管理放棄の森林の管理と、新らたに森林の管理・利用に参加する人々、団体への貸与をすすめる。もちろん、どのような組織、制度をつくっても、それが実行力のある活力をもった活動をしていくためには、その核になる人々が必要である。その役割は地域の森と密接な関係にある市町村自治体が担うべきであり、そのためには市町村自治体の林務関係の役割を抜本的に拡大、強化する必要があるだろう。
18)新たな「森林地図」の作成
以上のことをすすめる基礎資料として、新たな「森林地図」を作成する必要がある。
「森林地図」には、(1)所有者を明らかにした地図 (2)管理者を示した地図 (3)人工林、天然林、樹種、樹齢などを示した地図
(4)良好な森林、手入れの遅れなどのレベルを示す地図 (5)林道、徒歩道などの様子、ならびに、森林内河川とそこにつくられた人工構造物などの現況、さらに廃棄物処理場など、を示す地図
(6)森林内の動植物の分布を明らかにする地図 (7)森林整備をすすめた場合、どのような動植物が増加、復活するかを示す地図、などが必要である。
これらの地図の作成にあたっては、各種ボランティア団体、自然保護団体、小中高、大学など各種教育機関の参加を積極的にすすめる必要がある。
またこれらの「地図」を、いつでも市民が閲覧でき、森林ボランティアがどこでどんな活動をしているか、あるいはどこで森林ボランティアを必要としているか、それらに参加する方法、などの情報を集めた「流域森林情報センター」を開設する必要がある。
19)森林ボランティアの育成
現状ではまず第一に、行政が主催する森林ボランティア活動への、計画から実行までの全過程に、森林ボランティアの参加を求め、行政主体型活動と自発的活動調整・協力・分担をつくりだしていく必要がある。
また森林ボランティアの保険制度は、早急に完備しなければならない。
さらに、森林ボランティアの技術養成機関の創出が必要であり、ここでもボランティア団体との協力・分担が必要である。
20)森林に関する日本型ゾーニングを
日本の森林は、保護林と利用林の境界が明確ではなく、利用と保護とが連続性をもっていることに、その特徴がある。したがって、各種保護林、生産林などとゾーニングすることは正しいこととはいえない。
したがって、前記したように、各流域の森林の「フォレスト・ミニマム」をまず策定し、その内部に保安林機能を内包させたうえで、「自然環境の維持を優先させた利用林」、「木材生産を優先させた環境林」というように、日本型のゾーニングをすすめ、それに合った施業のあり方を策定する必要がある。
21)国有林、公社造林の実質累積赤字について
前記したように、国有林、公社造林の実質的累積赤字は、これまでの林業政策の失敗の結果であり、国有林の借入金に財政投融資を使わせた財政当局をふくめた、行政当局の責任であることを明確にする必要がある。
私たちは、早急に公社造林の実質的累積赤字額を明示するとともに、国有林の累積赤字とともに「森林債」化し、国有林と都道府県の累積赤字を、一旦解消することを求める。そのうえで「森林債」は、これまでの失政の責任を明確にするためにも、一般会計で処理することが望ましいと考える。
22)国有林の経営形態について
国民にとって国有林とは、第一に多様な役割を果たす環境林であり、その環境林としての役割を、損なわないことを大前提とした木材生産林である。
今日、国有林改革が様々議論されているが、第一に、私たちは、累積債務解消のための国有林改革には反対する。
累積債務と国有林のあり方は別問題である。国有林の管理形態は、国民の要求する国有林管理を実現するにはどうすればよいか、という視点からおこなわれなければならない。
第二に、私たちは、国有林の管理形態の見直しの過程で、国有林の分割や移管、一部売却などがおこなわれることに反対する。自治体のなかには、国有林の一部を、景観林、教育林、市町村のシンボル的森林などとして、自治体の手で管理することを求める動きもあるが、その場合でも、売却するのではなく、管理を委譲するかたちで応ずるべきである。
第三に、私たちは、現状の環境庁に国有林の一部を移譲することに反対する。
森林は、利用と森林の手入れ、環境の保全が一体化しているのであり、これらを総合してとらえ、また実行していく能力が、現状の環境庁にあるとは思えない。
第四に、私たちは、国有林を管理する営林署が、現場技術者をもたない森林管理機関化することに反対する。むしろこれまでの国有林の問題点は、森林管理計画や森林経営に携わる者と、現場技術者が分離していることにあったのであり、森林は現場作業と管理・経営の一体化を計らなければ、本当の森林管理にならないことを忘れてはならない。
国有林は、むしろ現場技術者を増強し、環境林の維持に重心をおいたモデル的な森林の利用と管理の体系を創造すべきである。
とはいえ、国有林の現状がこのままでよいというのではない。したがって第五に、営林署を流域、小河川、国有林の少ない地域においては統合流域毎に再創出し「流域森林委員会」との間で、統一的な森林管理計画、それにしたがった施業計画、市民参加の方策を打ち出し、国有林は地域、流域の「公有」の森であることを明確にすべきであろう。またそのために必要な施業は、黒字、赤字に関係なく実施されなければならない。
第六に、私たちは、国有林が地域、流域の人々、国民の望む管理がおこなわれていることを確認し、たえず流域の人々との協議を可能にするために、「森林オンブズマン制度」の創出を求める。
23)国有林全体の管理機関について
国有林は、中山間地の地域づくり、国民の森林との結びつきと深く結ばれており、森林だけで独立したものととらえることはできない。したがって私たちは、林野庁、国土庁、環境庁の森林、中山間地、森林と市民との結びつきに関係する部署を中心にして、総合的な「森林・水源庁」の創出を求める。
24)都道府県の林務政策について
前記したように、造林公社による拡大造林は、ほとんどの地域で歴史的使命を終えており、育林活動の継続は当然としても、原則としてその中止を私たちは求める。各県の林務政策は、新しく創出する「流域森林委員会」での役割を果たす方向で、改革されることが望ましい。
25)森林組合について
森林組合は、「流域森林委員会」と協力し、地域の森林を創造、維持するための機関へと脱皮すべきであり、そのことを前提とした林業活動の担い手へ変わる必要がある。
26)これからの森林財源について
以上のような森林政策が実現されていくならば、私たちは、森林ボランティア活動にかかわってきた市民の意見として、「森林・水源維持税」の創設を、積極的に訴えていく意志がある。
ただし、「森林・水源維持税」は、ダム・堰堤などの人工構造物の建設には用いないなどのことを、つまり森林の育成、手入れ、管理のために必要なことのみに用いることを、明確にしなければならない。
はじめに述べたように、森林はすべての人々と生物との共有財産である。
その森林が、いつまでも良好な状態を保ち、かつ循環的な利用が可能になるシステムをつくりだすことは、私たちの願いである。
そのような思いをこめて私たちは、森林ボランティア活動に参加している市民として、これからの森林政策について提言する。 |