プロジェクト活動

 

新たな森林社会の創造を求めて
森林ボランティア活動をすすめる市民からの第3次提言(骨子)

「森づくり政策」市民研究会

2000年11月

 


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(第3次提言・骨子)

 現在までの「森林社会」は、行政、森林所有者、林業関係者という三者により構成された社会であったが、森林の持つ公益性、環境としての性格はその直接的な受益の範囲を、一般市民にまで広げることを意味しており、「森林社会」における「市民(主権者)」を、一般市民にまで拡大したものとして、「森林社会」を再構築する必要がある。

1 「森林・林業・山村・流域基本法」の制定

現在の「林業基本法」は、林業経営をとおして森林管理をも実現することを基本にしているが、新たな「基本法」は、環境と森林の関係、農業と林業の関係、さらに山村という地域づくりと森との関係や流域、都市住民と森林との関わりなど、森とともに暮らす社会をつくろうと考えるさまざまな分野の人々の知識、知恵、行動を結集し、「森林・林業・山村・流域基本法」として制定すべきである。

2 「フォレスト・ミニマム」の設定

国及び地域におけるこれからの森林のあり方を考察し、そのうえで必要最低限の森林の整備・管理のあり方=「フォレスト・ミニマム」を設定すべきである。
この設定においては、社会全体で設計するとともに、設定までの手続きと設定後の変更までを含めた市民参加の手法を明確に確保することが必要であり、今後森林への公的支援がなされる際に、なぜ公的支援を進めるのか、あるいはその時の公的支援の範囲を決定する基準となるべきものである。

3 経済的利用に耐えうる森林の整備と管理

今後の森林管理の方策は、スギ・ヒノキを中心とした人工林をストック型の森林整備として、長伐期により環境保全を図る方策と、広葉樹林を対象に「雑木林林業」としてのフロー型の森林整備として、短伐期による環境保全を図る方策を中心に、環境保全を図りながら
4 農山村の森林と都市内里山との一体的視点

森林管理への市民参加を促進するため、アメニティーとしての森林と林業的利用としての森林の総合化をはかるべきであり、都市にある森林を「都市内里山」として位置付け、都市内里山から農山村の里山、奥山へと広がる森林全体と流域市民、地域住民の関係を、再確立していく必要がある。具体的な取り組みとしては、里山の生物多様性を確保するために雑木林を周期的に伐採するという環境保全のための公共事業を創設することである。

5 国産材の顔の見える市場形成

木材の流れにおいても消費が森林の再生につながるという「顔の見える市場」を構築しなければならない。そのために、木造住宅における国産材の使用を消費者に明示するラベリング制度を創設するとともに、使用される木材においては、森林の再生を保障し、適正な管理を行うことを保障するために、森林施業計画を活用した日本版の森林認証制度により認証された森林からの生産物に限ることとし、消費者(市民参加)による林業支援、森林整備を促進するシステムとすべきである。

6 積み上げ型の森林計画制度への改革

環境計画・資源計画・経済計画という三つの視点から、森林の制御における人工的な関与の度合いに基づいた自律性のある計画としてのゾーニングと、森と人とのかかわりの視点、すなわち森林整備の担い手の種類に基づいたゾーニングという2層のゾーニングを用いて、各流域の森林の「フォレスト・ミニマム」により地域の主体性に基づいた森林計画を樹立すべきである。

7 所有森林の「計画公示制度」と「保続対象森林制度」の創設

森林所有者は、自分の所有する森林を将来どういうかたちの森にするのかを「森林計画」として、市町村などの機関に届ける制度を創設する。

本来、森林は森林として維持されなければならないという「森林権」というべきものが必要であるが、将来にわたって森林として維持されることを促進するため、新たに「保続対象森林」制度を創設する。

8 「管理放棄森林」の第三者への管理権委譲

所有者に自分の森林の将来計画を提示してもらい、この提示がなかった森や、提示したものの、そのために必要な最低限の手入れ(「フォレスト・ミニマム」)を実行する意欲のない所有者の森を、「管理放棄森林」として、後述する「森林委員会」が認定する制度をつくるべきである。そのうえで「管理放棄森林」を、意欲のある林業家や、地域の森づくりをめざす機関やグループ、さらには森林管理に責任をもつ森林ボランティアなどの都市や流域の機関、グループに、管理権、利用権を貸与する仕組をつくるべきである。

9 森林保全に要する経費の「直接支払い制度」について

森林整備の担い手を対象とした直接所得補償制度を創設すべきであり、どの地域においても森林整備を進めることができるようにすることは、国が保障すべき「フォレスト・ミニマム」である。

具体策として造林補助制度を改善することで実質的な所得補償制度を創設すべきであり、その支払い対象を森林組合や林業事業体以外に、森林ボランティアをはじめとする市民活動も対象にいれることにより、多様な担い手の育成にもつながる。

なお、このような「直接支払い制度」の認定・運用は後述する「流域森林委員会」で行うことにより、流域の森林整備と連動した対応が可能になる。

10 市民参加による新しい「森林地図」の作成を

これからの森の守り方を検討するためには、所有地図や簡単な林相地図だけでなく、森と土壌と河川の関係についてや、その森の中で暮らすさまざまな生物に関する、さらには、その森と人の歴史についての、詳細な「地図」をもつ必要がある。そのため、大量の市民、地域の人々、さらに各地域の学校の参加をえて、新しい「森林地図」をつくることを提案する。

11 「流域森林委員会」の創設

森林管理はまずその地域が主体になるべきであるという立場に立って、農山村、都市を問わず、その地域に存在する森林と人間の関係を総合的に把握し、計画し、調整するとともに、森林資源の有効な活用をすすめる新しい機関として、流域全体の森林計画の策定やゾーニングの調整を行い、流域の最低限の森林整備のあり方(「フォレスト・ミニマム」)を各森林所有・利用者に提示していく、「流域森林委員会」を創設することを求める。

12 「森林委員会」と地域森林管理

市町村単位で「森林委員会」をつくり、地域全体の森林整備計画の策定やゾーニングを行い、これからの地域の森づくりに責任をもつ体制を整備すべきである。また、森林所有者の他、その地域の森づくりに参加する地域外の人々や、森と村の関係、森林の生態系や森と川の関係についての専門家、農山村と都市を結ぶコーディネーター的な役割をはたせる人々を委員として積極的に内部化していくことが重要である。

13 新たな「森林官制度」の創設

民有林にも「森林官」を設置することを提案する。この「森林官」は、国有林においては現在の森林官をあて、民有林における「森林官」は、都道府県行政との連携や実質的な意味からも、現在の都道府県の林業改良指導員制度を改善しこれにあてる。
そして、先述した「流域森林委員会」のもとに、国有林と民有林の「森林官」による協議機関としての「森林官連絡会議」を創設することにより、現場の声を直接反映できるシステムを構築する。
14 地域・流域の「国有林管理委員会」の創設

国有林を実質的な地域の森へと変えていくために地域の人々が参加する「国有林管理委員会」を各地につくり、現場では国有林の「森林官」と民有林の「森林官」が協力して、地域の森の管理にあたる。
また、この組織を「流域森林委員会」の中におくことによって、民有林の計画、調整をすすめる「森林委員会」と「国有林管理委員会」が協力し、真に「官・民一体」の森林管理が実現する。
15 「森林オンブズマン制度」と森林認証制度について

林道工事や施業後の森林が計画どおりになっているかどうかをチェックする「森林オンブズマン制度」が必要である。この制度は、「流域森林委員会」、「森林委員会」、「国有林管理委員会」のそれぞれにおいて、委員会自体を監査する役目を持つものである。

また、具体的な森林の取り扱いの決定過程への市民参加を可能にするため、民有林における森林施業計画、ならびに国有林の施業実施計画において、森林認証制度を活用することを提案する。

16 治山計画、保安林制度と「森林委員会」

地域・流域が主体となった森林整備をすすめるのであれば、保安林の指定、地域の治山計画の策定は、まず「森林委員会」がおこなうべきであり、市町村における「森林委員会」ごとの調整は「流域森林委員会」が行い、都道府県は国の基準に基づいてそのガイドラインを示し、国はその調整をおこなって実施するかたちに変更すべきである。

17 林道規格の撤廃と地域・流域における自主的な決定

林道は森林管理道路であることを明確にし、多目的林道の建設は中止するとともに、森林の手入れや管理、地域の人々の伝統的な森林利用のため以外の車両の乗入れを禁止する。また、林道規格をより自由なものにし、地域、目的に適した幅員の林道づくりをすすめるとともに、これまでのように一定幅の林道建設でなければ補助金を出さないという制度を改める、といった改革をすすめたうえで、早急に林道網を整備すべきである。

18 高性能機械に傾斜しすぎない技術の維持を

現在の課題は、森を守る伝統的な技を基礎にして、作業上ある部分を高性能機械で担うことのできる体制をつくることであり、また何よりも、森に必要な手入れと、森とともに変わっていく自然や地域の変化を的確にとらえる目をもった人々を守り、育成することが、森での作業における出発点だという根本的な問題を、現実化する体制をつくることである。

19 森林に関するすべての公的累積赤字の解消

民有林の「財政問題」としての、都道府県の森林整備法人や国の緑資源公団がかかえている実質的な累積赤字についても毎年、その年の木材価格で計算したとき、どれだけの「累積赤字」があるのかを計算し、すべての人々に公表することを求めるとともに、拡大造林を目的としてつくられた都道府県の森林整備法人も、国の緑資源公団による造林も、すでにその役割を終了しており、これからは契約森林の育林と、地域、流域に適した森づくりを支援していく役割に切り換えていくべきである。

.20 補助金システムの改革を

森林に関する補助金は、@森林管理のための道路の開設など、森とともに暮らす社会づくりのための基盤整備をめざした補助金、A地域に適した加工場づくりなど、森林資源を有効に活用するための補助金、B森を守り育成するために働く人々に対する「直接支払い制度」としての給付金に整理すべきである。また、国から地方への補助金については、総合補助金に改めることが必要であり、補助金の申請、受け取り組織は、現在の森林組合から、先述した「森林委員会」に移すべきである。

21 森林組合の改革と林業担い手の育成

森林組合法、協同組合法を改正し、その方が適している地域では、農林一体の協同組合や、農林漁業一体の協同組合、あるいは山村総合協同組合なども創設できるように改革することを私たちは求める。とともに森林組合の組合員を森林所有者と限定せず、一定の組合費を納める森林所有者以外の地域、流域の人々、たとえば森林で働く人々、森林を教育のなかで活用しようとする学校関係者、森林を舞台にして活動する文化団体や森林ボランティアの人々も参加できるように改革すべきである。

22 相続税の改善について

森林の相続税は相続時に払わなくともよく、その森を伐採したときに、過去にさかのぼって支払うことを可能にする、新しい制度を設ける必要がある。また都市内、都市近郊などにおける森林の土地に対する評価額の高さも是正する必要がある。立木・土地を含む森林の評価に当たっては、森林としての存続を前提に「私的財産」としての森林から「公共財」としての森林分を差し引いた額で評価できるように計算方法を改めるとともに、立木の相続税の支払いは、相続回数に関係なくその森林を伐採した時点で一回支払えばよいというかたちに改正すべきである。

23 森林における生物多様性の保全

生態系としての森林を維持し、未来に伝えていくために、人間と野生生物の共存を可能とするような森林づくりが必要とされている。この森林における生物多様性の保全のためには、保安林制度等を活用した地域指定や森林認証制度を用いた「直接支払い制度」の活用、農作物などへの動物被害に対する補償制度の創設を合わせた総合対策が必要である。

24 住民としての二重登録制度の創設

都市は農山村を必要とし、農山村は都市を必要とする社会をつくりだすには、農山村と都市とを一体的な場所として暮らす人々を生みだしていく必要がある。そのためには、希望する人々に、住民としての二重登録を認めるべきである。

25 山村の生活上の条件不利の早急な解決

適切な森林管理が長期持続的に実現するには、山村での人間の安心して暮らせるような条件を整えることが必要であることはいうまでもない。そのために私たちはまず、生活上の条件不利を取り除くことを求める。

26 森林ボランティアの育成

森林ボランティアは、森林公共空間における公共サービスを担う点では行政となんらかわりないものと判断されることから、緑の募金制度の優先的な活用により、活動支援を行うべきである。

このような支援策により、将来的には森林NPO自体が森林整備主体に成長することも可能となり、多様な主体による森林整備が実現されるようになる。

27 総合的な流域管理組織の創設を

森林はこれからの日本の社会の基盤であり、大事な国民共有の財産である。とするなら森林行政にはもっと力を入れるべきであり、地域・流域からの森林管理を基礎にした、開かれた行政を総合的にすすめる組織が必要である。そのためには、地方分権、地方主権を強化し、主人公は地域であり、中央はそれを補佐するという関係がつくられなければ、森とともに暮らす社会づくりは実現できない。

28 これからの森林財源について

「森林・水源税」の創設のほか、環境への負荷に応じて社会的責任として環境を保全するための費用を負担するという基本に立ち、森林を開発する面積に応じた「森林開発税」や二酸化炭素の排出量に応じた「炭素税」などの創設などにより、森林保全のための財源確保に取り組むべきである。

29 新たな木材需給率の設定について

今後の森林・林業政策の基本的な目標値として、地球温暖化防止対策としての建築資材や化石燃料における木材の代替による需要量、木材需要における国産材需給率、持続可能な森林経営からの木材調達率などを掲げることが必要である。ただし、その具体的な数値の設定については、国内の森林の木材生産能力の精査など多くの課題が山積されているため数年間をかけて国民にオープンな形で議論され決定されるべきである。また、国内における森林・林業政策においてもその森林経営が持続可能なものとなるように改めて環境対策を含めた森林・林業における「環境大綱」を早急に取りまとめることが必要である

 
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