NPO法人 里豊夢わかさ(りほうむわかさ)
一人でも多くの人に里地里山を身近に感じ、自然と共存できる生活への見直しの機会となることを願って、里山の自然保護・再生活動と将来を担う子どもたちが自然と関ることが出来る原体験の場の提供を行っている。
身近な里地里山の活用
里豊夢わかさは、自然環境の荒廃と子どもたちの生活環境の悪化を危惧する者の総意で結成された団体である。福井県若狭町能登野地籍の里地里山をベースとして、小規模ではあるが自然環境保全・再生活動に取り組み、自然を身近に感じる空間づくりを行っている。小規模で身の丈に応じた活動で、いろいろな地域で志のあるものが身近な里地里山に目を向け、環境整備や子どもたちの遊びを中心とした活動の場づくりのきっかけとなることを願っている。
活動を支えてくれているスタッフは、全員が幼少期の自然遊びやモノづくりの経験が豊富で、子どもが大好きという共通点を持っている。さらに、子どもの主体性を大切にしており、ボランティア精神が高い。
環境保全・再生活動
豊かな森と親しみの持てる里山の実現に向けて植樹活動と環境整備を行っている。活動地一帯に広がる松枯れ木の伐採や人工林の間伐、風倒木の処理などを会員とボランティアの協力で行い、危険な里山を幼児でも安心して過ごせる空間へと変えてきた。活動の拠点地として「いこいの広場」を設け、そこに間伐材を利用して炭焼き小屋やピザ小屋などを造成してきた。
また、植樹地も徐々に広げ、小規模ではあるが植樹活動を積み重ね、第10回ミニ植樹祭を昨年実施した。植樹木は、里山に植生しているクヌギ、コナラ、ヤマグリ、ナナカマドなどの広葉樹で計画的に植樹している。この植樹活動には子どもたちがの活躍が目立ち、その頑張りに感心させられる。周りの植樹の様子を真似て植樹に挑戦している2歳児もいるなど幼児も積極的に活動に参加している。
植樹活動の最大の悩みは、植樹した木々の管理である。豊かな森づくりに対する思いが込められた植樹木が獣害にあっている。活動初期は苗木の幹にネットを巻き付ける程度の対策であったため一冬を超すと植樹木の約90%が鹿による被害を受けた。その後、簡易ネットで植樹地帯を取り囲んだが全く役に立たず、現在は獣害対策金網ネットを3年かけて設置し、更に鹿がネットを飛び越えて侵入できないよう植樹地を3重のネットで取り囲み、被害減少につなげている。植樹活動は獣害との戦いでもある。
「子ども文化」の復活と自然に親しむ体験活動
子どもたちを取り巻く生活環境の著しい変化により、子どもたちの活動場所や活動内容は様変わりしており、自然とのかかわりが極端に少なくなっている。また、延々と受け継がれてきた大人の関与を受けない自然遊びやモノづくりなどの「子ども文化」が我々の時代で消滅しかけている。
主にこの二つの課題を少しでも解消することを目的に自然体験活動を行っている。題材は里山の自然そのもので、異年齢集団による里山まるごと体験活動である。2歳児から高校生までと幅広い参加を得ているが、兄弟姉妹が少ないため異年齢の活動は貴重な体験となっている。感心することは、目線を同じ高さにして一緒に遊び、安易な手助けをすることなく体験活動の様子を温かく見守っていることである。
活動内容は、自然散策や薪づくり、ネイチャクラフトなど季節に合わせて行っている。活動にはノルマがなく、失敗を恐れず、失敗から何かを学ぶようにしている。子どもたちは遊びを通して「協調性」や「思いやり」、時に「忍耐」を学んでいる。自然体験活動は、子どもたちが活動を通して生きる力を高め、自己実現や自己管理能力をも高める場となっている。
参加者の中には、不登校生が安らぎを求めてくる時もあり、ギスギスした社会のなかで、居心地の良い、ストレスのない空間となりつつある。
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NPO法人 里豊夢わかさ(りほうむわかさ)
〇所在地:福井県三方上中郡若狭町
〇設立:2007年
〇ホームページ:https://rihoumwakasa.jimdo.com/
※この記事は森づくりフォーラム会報「森づくりフォーラムだより Vol.166」にも
掲載しております。