森林と社会と暮らし

森林を、社会的な存在として考える

 1989年、林業の不振、山村の過疎化、環境破壊など森林をめぐる危機が進行しつつあった頃、そうした時代的状況を背景に、「森と人間との共生」をテーマにした一冊の著書が刊行されました。

 それが『森林社会学宣言』です。

 編者は森づくりフォーラム代表である内山 節(うちやま・たかし)で、森林・林業を様々な角度から研究する13名の著者が、それぞれの研究テーマに沿って書かれたものです。森林を単に「自然的存在」としてとらえるのではなく、「社会的存在」として森林に関わって生きる人々との関係性に重点が置かれています。
 森林を総合的にとらえる「新しい<森林の思想>」としての森林社会学の誕生は、森林のみに関する著書が多勢をしめていた当時としては、画期的な試みでもありました。

 現在は、多くの大学の環境学部門内で森林と人との関わりを扱う、森林社会学的な分野がつくられ、研究が続けられています。2010年には三重大学名誉教授の三井昭二氏が、森林社会学の構築を目指して『森林社会学への道』を刊行されました。このように「森林社会学」は、森林や環境の研究者の間では学際的な領域における、新しい研究分野として注目されています。

 市民のための「森林社会学」を

『森林社会学宣言』の中で、内山 節は次のように述べています。

人間が暮らす地域における自然は、自然として自己完結していることはなく、
自然―自然関係、自然―人間関係
という2つの関係、2つの交通のなかに生まれた実態である

 古来、日本人にとっての自然=森林は、人々の暮らしに欠かせないものであり、多様な自然と人間の交通により、森林との共生を実現させていました。

 ところが、戦後・拡大造林期を経て、資本主義における商品経済の価値観が浸透していくと、森林もまた商品の一つとしてみなされるようになり、森林との多様なつながりは影を潜めていきます。そこで、「失われてしまう前に、森林とのつながりを取り戻したい」と願うひとびとが、森の多様な価値を見直し、またあたらしく森との関わりをつくろうと動きはじめました。この動きはいま、全国に拡がっています。

 こうした社会的状況を背景に、森づくりフォーラムでは森林を「社会的存在」として総合的に扱う「森林社会学」のスタンスと思想が、市民のこれからの暮らしにとって重要であると考え、2015年、森林社会学研究会を設立しました。        

 継続的に講座を開催していますので、関心のある方は「森林社会学研究会 概要」のページをご覧ください。